CDP-cholineが有効であったcorticobasal degenerationと考えられる1例


JQ:9602959
掲載誌:神経内科  44(4)377-379(1996)
表題:CDP-cholineが有効であったcorticobasal degenerationと考えられる1例
著者:濱野  忠則/福井医科大学第二内科/現  東京大学医学部脳研究施設脳病理学部門
平山  幹生/福井医科大学第二内科
木之本景子/福井医科大学第二内科
曾田  隆志/福井医科大学第二内科
武藤多津郎/福井医科大学第二内科
症例数:1
摘要:症例
患者:K.S, 63歳,男性.
主訴:左手がぎこちない.
家族歴:同様疾患の者はいない.
既往歴:53歳時痛風.
現病歴:1990年春頃より洋服のボタンがかけにくいなど,左手の不自由感を感じ始めた.
1991年8月に当科を紹介され受診した.左上下肢の筋固縮を認め,当初はParkinson症候群と考えられL-dopaの投薬を受けたが症状はむしろ増悪し,徐々に右上下肢にも筋固縮が出現した.
また,手を出そうとしてもひっ込める,左手を使い運転できない,ボタンやネクタイがかけられない,左足から階段が上がれない,あぐらがかけないなどの症状が出現増悪し,1993年9月当科に入院した.
入院時現症:
一般内科的所見では血圧130/82mmHg,脈拍84/分・整.その他,胸・腹部には異常はなかった.神経学的所見は意識清明,人格正常.病識はあった.
筋力は正常で,右上下肢で軽度,左上下肢で中等度の筋固縮を認めた.
深部反射は四肢で軽度減弱.Babinski徴候は両側陰性.Myerson徴候は陽性であった.右側に強制把握を認める.
歩行は自力で可能であるが,左手の振りは認めずジストニーがみられた.知覚系は正常であった.
指鼻試験で両側とも明らかな測定異常は認めないが,左側ではいったん前方に出した手が戻ってしまいなかなか進行せず,拙劣であった.
高次機能検査:Mini-Mental Stateは28点,WAISで全IQ88(言語性113,動作性54).
左半身に消去現象腸性.左上下肢で日常生活は緩徐で巧緻運動は拙劣であった.
タバコ,マッチ試験では,火のついたタバコを右手から左手に持ち換える動作が困難で,いったん灰皿の上に置いた後なんとか左手で持つことができた.左手では火をもみ消せず,火のついた方を上に向けてしまった.
また,左手で命令された動作をしようとすると常に一瞬とまどいを示した.手指の模倣は握り拳以外不可能で,左足でスリッパを履いたり,タバコの火をもみ消す動作も拙劣であった.
また,構成失行,着衣失行も認めた.指鼻試験や握手の際に左側は出した手が一瞬逃げる,本人の意図と反対のいわゆるalien handsign様の徴候を認めた.
道具の強制使用や桔抗失行は認めず,失語もなかった.
検査結果:
血液一般は異常はなかった.頚椎単純写でC5〜C7に軽度のspondylosisを認めた.髄液検査は蛋白65mg/dlで軽度の上昇を認めたが細胞数は正常であった.
NCVはほぼ正常であった.EEGでは基礎波9〜11Hzのα波で両側前頭部に4〜5Hzのθ波の混入を認めた.
棘波はなかったが,右前頭後頭部が全般に1azyであった.頭部MRIでは右優位の両側頭頂・後頭・側頭葉の萎縮を認め,T2強調画像では,両側後頭葉深部白質に点状の高信号域がみられた(図1).
また,123 I-IMP-SPECTでは石頭頂葉を中心に集積が低下し,再分布も不良であった(図2).
経過:
当初は左半身の肢節運動失行,錐体外路徴候が著しかったが,徐々に対側にも主に筋固縮を中心とした錐体外路徴候が出現した.下肢の肢節運動失行も増悪し,眼球運動障害も1994年7月頃より徐々に出現し,全方向注視制限を認めるようになった.
Parkinson症状に対しL-dopa投与を行ったが,効果は認めず症状は進行した.入院後連日CDP-choline500mgの静注を行ったところ,投与7日目頃より左足から階段が登れる,両足を使いあぐらがかけるようになるなど明らかに改善した.
筋固縮の程度は著変なく,錐体外路徴候よりむしろ肢節運動失行の軽減に伴うものと考えた.
左上肢はボタンがはめられない,ネクタイが結べないなど症状の改善はなかった.
図表リスト:図1:頭部MRI(GE-SIGNA,1.5Tesla)
図2:123 I-IMP-SPECT所見
引用文献数:4
英文抄録:無し