進行性核上性麻痺

 進行性核上性麻痺(以下PSP)とcorticobasal degeneration(以下CBD)はともにパーキンソニズムを合併するなど類似したところも一部あり、診断の上では常に区別しなければならない疾患です。また、発病間もない頃はパーキンソン病との区別が難しいこともあります。
以下ではPSPとCBDの症状の違いや共通点についてまとめてみます。



発症年齢と初発症状 PSP、CBD ともに発病年齢は平均すると60才で、50〜60歳代に発病することが多いです。PSPの患者さんが初めに感じる身体の異常で一番多いのは転びやすいなどの歩行障害です。一方、CBDでは手の動きがぎこちない、あるいはふるえが多くなっています。
症状 高次大脳機能 CBDの患者さんの手の運動のぎこちなさは筋力低下や固縮によるものではなく、失行が関係していると考えられます。失行というのは自分がこれから行う動作の意味や方法をきちんとわかっているにもかかわらず、その動作をしようとしたら出来ないというものです。大脳皮質の特定の部分の障害によって出てくる症状です。この症状はPSPでは認めません。
  痴呆 PSPでは程度は軽いもののかなりの頻度で痴呆がみられます。PSPの特徴の一つと考えられます。一方、CBDでは患っている期間が長くなると一部の患者さんに痴呆を認めますが、初めのうちは痴呆はないことが多いです。
眼球運動障害 PSPの患者さんの診断の上で、眼球の動きが悪いかどうかが最も大切なポイントになります。つまり、PSPの患者さんでは初め上下方向にうまく眼球を動かすことが出来なくなり、特に、下の方をうまく見ることが出来なくなります。さらに進行すると、左右方向にも制限が出て、ついには眼球を動かすことが出来なくなります。それに対してCBDでは動いているものを目で追いかけるときなどに滑らかな眼球運動がうまくいかなくなることが多いのです。
不随意運動 不随意運動とは自分の意志に反して筋肉が勝手に収縮して、手足や胴体、顔などに不自然な動きが出るものです。一番わかりやすい例はふるえです。ふるえはCBDのほうが目立ちますが、 パーキンソン病のふるえとは違って、ある姿勢をとったときや、動作をするときに出てくる場合が多いです。PSPではふるえは少ないです。ふるえ以外にもいろいろな不随意運動があるのですが、CBDのほうにみられることが多いです。また、PSPで大変特徴的なのは首や胴体の筋肉が硬く収縮して、頭を後ろに反らせたような姿勢ととることが多いという点です。CBDでは上肢がだんだん硬くなり、手を強く握りしめ、肘を強く曲げ、手首も手のひら側に強く曲げたまま、身動きがとれなくなることがよくあります。
 歩行障害 立ったときの転び易さ、歩きづらさはともにみられますが、特にPSPでは特徴的です。
 その他 パーキンソン病では症状の左右差が大切なポイントの一つでしたが、CBDにおいても上に書いた様な症状に明らかな左右差があるというのが大きな特徴の一つです。PSPでは左右差は比較的目立ちません。
   治療 残念ながら有効な治療法は確立されていません。体が固くなり、動きが悪くなることに対して、l-dopaを使いますが、パーキンソン病のようにはよく効きません。病気が進んだ場合には肺炎などを大変起こしやすくなるので、全身状態を極力よく保つことが治療の中心になります。